Vol.20 25AW 秋を彩る6つの顔
- kaifuku8
- 9月20日
- 読了時間: 11分
更新日:9月26日
夏の終わりにやってくる、あの独特の空気。
昼間はまだ陽射しが強いのに、夕方の風はひんやりしていて──洋服選びに一番迷う季節かもしれません。けれど、その迷いがあるからこそ「秋の装い」は楽しいのだと思います。
今日は、そんな時期に心惹かれた6つのアイテムをご紹介します。どれもDOMELLEの秋を語るうえで欠かせない顔ぶれです。
Part 1 秋を一枚で仕上げるドレス
MIXED FABRIC DRESS
「今日は何も考えたくない」──そんな朝に限って、人と会う予定がある。
コーディネートを組み立てる余裕なんてないのに、きちんと見せなきゃいけない。そんな時に手が伸びるのが、この一枚で装いが決まるドッキングドレスです。
トップスは、日本国内で仕立てられた強撚コットンジャージー。ガス焼きとシルケット加工で毛羽を丁寧に落とすことで、表面にはほどよい光沢と、すっきりと洗練された印象が宿ります。柔らかく伸びやかなのに、適度なハリがあるから、Tシャツのようにカジュアルすぎず、かといってブラウスのように堅苦しくもない。朝の「今日はどっちの気分?」を考えなくても、このバランスがすでに整えてくれているのです。
スカート部分はポリエステルアセテートのメモリータフタ。軽やかで、裏から吊り上げたバルーンシルエットが歩くたびにふわりと揺れ、自然な立体感を描きます。光を含むと表情が変わり、さりげなく華やかさを演出。まるでセットアップを着ているかのように見せてくれるのに、実際はこれ一枚。技巧的でありながら、袖を通すと驚くほど気楽にまとえる──この矛盾の心地よさが魅力です。
私は先日、急な打ち合わせのあとに友人とディナーに行くことになった日、このドレスに助けられました。昼間は端正に、夜はそのまま華やかに。コーディネートを変えなくてもシーンに寄り添ってくれる安心感は、まるで優秀な秘書のよう。しかもウエストはゴム仕様。ディナーのあと「やっぱりデザートは別腹よね」と笑いながら追加注文しても心配無用でした。さらに旅先にも持っていける手軽さがあって、手洗いできるからホテルのシンクで軽くすすげば翌日にはもう着られる。スーツケースの中でもかさばらず、旅のお供としても頼もしい一枚です。
気楽でいて華やか。日常からほんの少し背伸びをしたい時に、肩の力を抜きながらも特別感を添えてくれる。そんな頼もしさが、この季節の気分にぴったりです。クローゼットの中で待機している姿を見るだけで、「いざという時は私がいるよ」と微笑みかけてくれるような、心強い存在のドレスです。
REDA TWILL DRESS
イタリア・REDA社のウールツイルを贅沢に使ったこのドレスは、クラシカルな気品そのもの。纏った瞬間に背筋が伸びるのに、堅苦しくはならず、しなやかに日常へ溶け込んでくれる一枚です。
REDAは150年以上続く老舗の梳毛メーカー。世界で初めてB Corporation認証を取得したことでも知られ、サステナブルで透明性のある生産体制を誇っています。その生地は光沢と落ち感が美しく、肌に触れたときのなめらかさに思わずため息が出るほど。袖を通した瞬間「これは本物だ」とわかる力が宿っていて、ただの“きれいな洋服”を超えて、信頼感をもたらしてくれます。
デザインはスリーブレスのテントライン。肩から背中にかけて深く入ったタックが、揺れるたびに光を受け、陰影を描きます。シルエット自体はシンプルなのに、動きの中で自然に表情を変えていくのは、この上質な生地と構築的なデザインがあってこそ。共布の太いベルトは、今シーズン注目しているアクセントです。きゅっと結べば都会的なシャープさを、外せば空気を含んだように軽やかさを──まるで2つのドレスを所有しているかのような変化を楽しめます。
私は先日、友人の結婚式にこのドレスのグレーを選びました。華美ではないのに会場に自然に溶け込み、写真に映った自分を見て「ちょっといいじゃない」と思わず笑ってしまったほど。昼間は式典にふさわしい端正さを保ちながら、夜のパーティではベルトを外すと一気に軽やかに揺れて、気づけば音楽に合わせてスカートをひらひらさせていました。1日の中でこんなにも自然に装いを変化させてくれるのは、REDAの生地が持つ力と、このミニマルなデザインの妙のおかげです。
フォーマル過ぎず、けれど日常着では物足りない──そのちょうど中間を探している人に、このREDAのドレスはきっと響くはず。クローゼットの中で特別な日を待っているだけでなく、何気ない日常にもさっと手を伸ばしたくなる、そんな頼れる存在になってくれるはずです
Part2 遊び心あるトップス
STRIPE BLOUSE
ボディシャツは真面目すぎる?いいえ、このブラウスは少し違います。きちんと感を守りながらも、堅苦しくなりすぎず、軽やかでリラックスした空気をまとえる一枚。通勤にも休日にも、思っている以上に幅広く寄り添ってくれる存在です。
使用しているのは、日本国内でオリジナルに織り上げた先染めのストライプ生地。タテ糸には細くしなやかなコットン、ヨコ糸にはナイロンを組み合わせ、高密度に織り上げています。そのため、ただのプリントには出せない奥行きが現れ、光を受ける角度によってストライプの濃淡が微妙に移ろいます。さらに、コットンのやわらかさとナイロンの弾力がバランスよく同居し、ほどよいハリとコシを生み出しています。仕上げにはウォッシュ加工を施し、洗いざらしのような自然体の風合いに。触れたときに感じるドライな質感は、素肌に近い感覚で心地よく、季節を問わず長く愛用できそうです。
シルエットはコンパクトで、裾は後ろに向かってわずかに下がり、ダーツによって描かれる丸みが立体的な表情を加えます。直線的なストライプの中にやわらかな曲線が交わることで、ほどよい女性らしさが宿るのもこのブラウスならではの魅力です。
さらに、取り外し可能なボウタイが装いに自由度を与えます。大きく結べば視線を惹きつけるドラマティックな印象に、小さく結べば蝶ネクタイ風の遊び心が生まれます。そして、あえて外せば、ストライプのシャープさが際立ち、すっきりとしたモダンな雰囲気に。
あれ?ボウタイを外した画像がないですね。
さて、気を取り直して…。
一つのブラウスで三つの表情を楽しめる──それはブランドからの新しい提案でもあります。
私は先日のプレゼンの日、きちんとボウタイを結んで出かけました。鏡に映る自分は少しだけ凛々しく、心の奥で背中を押されるような感覚がありました。発表を終えて帰り道、そっとタイを外すと胸いっぱいに広がる解放感。ガラスに映った姿を見て、「今日はよく頑張ったな」と小さくうなずいたのを覚えています。そのままジャケットを羽織れば、急な会食にも難なく馴染み、仕事とプライベートの境界を軽やかに行き来できる。真面目にも、少しおどけても──どちらの表情も受け止めてくれる。こういう服が手元にあるだけで、秋の心はずっと軽く、しなやかに過ごせる気がします。
SPANGLE RIB SWEATER
夜空の星をそのまま散りばめたようなセーター。袖を通した瞬間、ありふれた日常に小さな魔法をかけてくれるような存在です。
使われているのは、わずか1mmという極小のスパンコール。しかも布の上に縫い付けたのではなく、ウール混の糸に撚り込んで編み上げています。そのため、輝きは驚くほど繊細で奥ゆかしい。触れてもチクチクせず、さらりと心地よい手触りです。さらに裏側はストレッチ糸で二重構造になっていて、肌に当たる部分は思いがけないほどなめらか。こうした緻密な作り込みがあるからこそ、スパンコールなのに“特別な日”だけでなく“日常着”としても安心して着られるのです。
シルエットはシンプルなクルーネック。右脇にひとつ入ったタックが裾をアシンメトリーにし、ほんのりモード感を添えています。ベーシックに見えて、よく見ると少し違う。そんなさりげない違和感が、着る人の個性を引き立てます。スウェット感覚でラフに着こなしながらも、確かに「今日はおしゃれしている」と思わせてくれる──それがこのセーターの魅力です。
私は白シャツをインにしてレイヤードするのが好きで、同僚に「え、それ実はスパンコールだったの?」と驚かれたことがあります。“ギラギラ”ではなく“きらきら”。昼間の窓から差し込む自然光の下では控えめに瞬き、秋の街灯にふと照らされるときには少しドラマティックに輝く。そのどちらも嫌味がなく、ただ自分が少し特別になったように感じさせてくれる。そう思わせてくれるのは、1mmの小さな輝きに秘められた力です。
クローゼットから取り出すたびに「今日はちょっといい日になるかも」と思わせてくれる──そんなお守りのようなセーター。秋の入り口に、一枚で空気を変えてくれる頼れる存在です。
Part 3 素材で魅せるアレンジ
SILK JQ ORGANDY BLOUSE / SKIRT
近くで見れば見るほどに驚かされるのが、この素材。
日本国内で織られたシルクオーガンジーをベースに、リサイクルウールポリエステルをブロック調に織り込み、渡り糸をカットして立体感を出しています。光を受けるとブロック柄がふわりと浮かび上がり、インナーの色によってまるで別物のように印象が変わる。その変化はまさにアート作品で、布そのものがキャンバスになったかのようです。
ブラウスは大小の楕円パーツを肩と脇の一部だけで留め、布の持つ自然な動きをそのまま生かしたデザイン。風をはらむたびに布が微妙に揺れて、体の動きに呼応するように見えます。縁には繊細なパイピングが施され、アイボリーのインナーを重ねれば黒のラインが鮮やかに際立ち、装いに緊張感を添えてくれる。
スカートはアイボリーの裏地と段差をつけた仕立て。裾の透け感に奥行きが生まれ、歩くたびに光が層を描きます。後ろにはラウンドしたスリットが入り、ブロック柄がリズムを刻むように揺れ動く。動きの中でこそ、この布の立体感が完成するのです。
私はある日、美術館巡りにこのブラウスを選びました。自然光が差し込む展示室で、布地がまるで作品と対話しているかのように輝き、知らない人から「それ、どこの服?」と声をかけられたのを覚えています。
知らない人からですよ!そんなこと、多分初めてじゃないでしょうか。そして後日、今度はスカートを単独で黒のニットに合わせたら、友人に「作品の一部だけ切り取って着てきたみたい」と笑われたことも。
ちょっとしたユーモアを交えつつ、この素材ならではの存在感を再認識しました。
もちろん、セットアップとして装えば圧倒的な存在感を放ちます。昼間の街ではシックに、夜のレストランではライティングを受けてブロック柄がドラマティックに浮かび上がる。黒のワイドパンツにブラウスを合わせたり、スカートをニットと組み合わせたり──それぞれを単品で使うだけでも、秋の日常をほんの少し特別に変えてくれます。
クローゼットに掛かっている姿を見るだけで、「今日は予定がないけれど、どこかに出かけたい」と思わせてしまう、不思議な服。朝の光に透けるブロック柄を目にすると、まるで布地そのものが誘いかけてくるようです。着る人と一緒に過ごす時間が、日常を少しずつ豊かに塗り替え、まるで美術館の展示のようにひとつひとつの体験を刻んでいく。眺めているだけでも心が弾み、袖を通せばさらに新しい物語が始まる──そんな特別なセットアップです。さらに新しい物語が始まる──そんな特別なセットアップです。
REDA TWILL JUMPSUIT
最後は、秋の装いに“ひとさじの遊び”を加えてくれるジャンプスーツ。
きちんと感とラフさを同時にまとうことができる、大人のための一枚です。
素材はイタリア・REDA社のウールツイル。150年以上続く老舗であり、世界で初めてB Corporation認証を取得したサステナブルなメーカーです。その生地は上質で、ほのかな光沢と美しい落ち感を備えています。しなやかなのに芯があり、光を受けると影までもが美しく映える。ワーク風のデザインに大人の余裕を与え、纏った瞬間に「ただの作業着」ではなく「都会的なユニフォーム」へと昇華してしまうのが、この素材の力です。
デザインは一見シンプル。バンドカラーのシャツにワイドパンツを合わせただけのように見えます。けれど着る人の体の動きに合わせて生地が流れ、自然にモードな雰囲気を醸し出す。細いベルトでブラウジングすれば、ウエスト位置を変えてシルエットを自在にアレンジできるのも魅力です。袖を軽くまくってラフに着る日もあれば、ベルトを外してオーバーサイズ気味に落として着る日もある。ひとつの服でいくつもの表情を楽しめるのは、ジャンプスーツならではの特権です。
私は展示会の設営日にこれを選びました。脚立を持ち上げたり、什器を運んだり、ひたすら動き回っても驚くほど快適。けれど、そのままバイヤーとの打ち合わせに入ってもきちんと見える。「働く日の味方」とはまさにこのことだと思いました。汗をかいても通気性があるのはウールならではの特性で、真夏を除けば季節をまたいで長く活躍してくれる頼もしさも嬉しい。実はその日、汗を拭いながら「この服、動きやすいのにちゃんと格好いいですね」と言われて、ちょっと得意げになったのを覚えています。
クローゼットにあるだけで「今日はどんなふうに着こなそう」と想像が膨らむ服。仕事の日には働く制服として、休日には街歩きのパートナーとして。カジュアルとモード、ワークとエレガンス──その境界を軽やかに越える楽しさを、日常に加えてくれるジャンプスーツです。所有すること自体が安心感になり、袖を通すたびに「今日も大丈夫」と思わせてくれる。そんな信頼できる相棒のような存在です。
秋の装いに広がりを
こうして並べてみると、6つのアイテムがそれぞれ違う秋の表情を見せてくれます。
ドレスで仕上げたい日もあれば、ブラウスで遊びたい日もある。
きらめきを欲する日も、静かな素材感に包まれたい日も。
秋は、一枚の服が気持ちを変えてくれる季節。
今年の私は、この6つのおかげで「今日は何を着よう?」という迷いすら楽しめそうです。
✳︎各アイテムの詳細は LOOKBOOK でもご覧いただけます。









































