第4話『 マーキングは真面目なテトリス 』
マーキングと言えば、動物が自分の存在や縄張りを示すための行為を思い浮かべますが、今回お話しするマーキングはそのことではなく、アパレル業界で言われるマーキングという作業についてお話します。 洋服は、一般的に様々なパーツを縫い合わせて出来上がっていますよね。
その様々なパーツは、元となる型紙を使って、一枚の長く巻かれた生地を無駄なくカットして制作されます。
『無駄なく』ですよ。
無駄が多く出ると、生地もその分余計に使うことになり、出来上がる洋服の価格が無駄に高くなってしまいます。
ましてや超高級な生地ともなれば、一切の無駄は許されません。
そんな仕事を高い技術と豊富な経験でこなすのが、パタンナーという人達です。そして、一枚の生地に必要なパーツをどうはめ込んでカットするかを決める作業を、マーキングと呼んでいます。
パタンナーさんはデザイナーがイメージした洋服のデザインを見て、それを実際のかたちにするために、2Dのデザイン画から3Dの立体になるよう具現化していきます。そこから生まれた、前パーツ、後ろパーツ、袖、衿などの型紙を目測して、生地幅いっぱいに、綺麗に、無駄なく当てはめていきます。まさにこれがマーキングです。その仕事っぷりは本当に職人技です。
みなさん、ゲームのテトリスってご存知ですか?上からT字やL字のコマが降ってきて、そのコマの向きを上手に変えて一列揃えるアレです。パタンナーさんのマーキング作業って、まさにゲームのテトリスをやっているかのようです。もちろん、ゲームのように楽しくはないかも知れませんが。 このマーキングによって、1着に必要な生地量を計算することができ、30〜50m程の長く巻かれた生地から何着生産できるかが決まるわけですから、非常に重要なお仕事です。 うちのデザイナーは着心地やシルエットにこだわりが強いため、『ここに縫い目を作ると体に触るから気持ち良くない』『バックシルエットは分量たっぷりのこんなフォルムがいい』などと無理難題ばかり要求するもんですから、パタンナーさんって大変だろうなと思うと同時に、そんな無理難題を受け止めて仕事をやり抜く様を見ていて心から尊敬します。 DOMELLEのお洋服は、年を重ねて変化していく自分の体を好きになれるよう、着心地とシルエットにこだわって作っています。そのこだわりの秘密についてもまた今度、お話したいと思います。
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